- ISSUE#01
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REVIEW – Climate Crisis & Melting Ice
June, 2021
June, 2021
Exhibition #01の作品より、「気候危機」がもたらす「海面上昇」をモチーフとした2作品のレビュー。そのレビューを通して、気候危機と海面上昇の問題に触れる。
■“どんな状況でも明日はあり、何かを背負いながら生きていく”
冒頭の町田ヒロチカの作品に戻る。彼のペインティングは、ノスタルジックとモダンを行き来するような風景画を描くことが多いが、イラストレーションも得意としており、そこでは動物が多く描かれている。また、漫画のキャラクターなども制作しており、“Penguin On The Last Ice”では、彼のその器用な作家性が発揮されている。ダイナミックに波打ち全てを流し去る海を描き、気候危機という緊迫感を表現しながら、同時に、その中心で呑気にくつろぐペンギンは、地球温暖化の当事者でありながらも無関心と諦めを纏った、ニンゲンを揶揄しているようにも見えるのだ。そんな皮肉さが、キャッチーでもあり、ポップにも映るのが彼の作品の魅力だ。
一方、ペインター・MOTAS.の作品では、親子とおぼしき抽象的な生き物が、涙を流しながら海を彷徨っている。その姿と絵のタッチ、そして色合いはどこか無常感を漂わせている。地球儀が海面に浮いているが、よく見るとそこには陸地が描かれていない。海だけの地球。生気に満ちた鮮やかな深緑の森や、動物たちが闊歩する見渡す限りのサバンナ、はたまた、ニンゲンが長い年月をかけて切り拓いていった家々や光り輝くネオン街も、全てが海に沈んでしまったのだろうか。
MOTAS.は2020年より、BLEYE(ブライ)という名を持つ、“折れ曲がった中指”をモチーフに、人間特有の感情を投影した作品を描き始めた。MOTAS.はそれら作品を通して、最終的には無へ向かうための経過を表現していると言う。そういった意味では、気候は変わり続け、地球もニンゲンもBLEYEもいずれ無へ還る、その過程を切り取っているにすぎないようにも感じさせる。それが、この絵が与える“無常感”なのかもしれないが、同時に、今作に描かれているBLEYEの子どもからは、今の変わりゆく地球を親から引き継いでいくことへの悲哀をも感じさせる。その半身が海に浸かってしまった親のBLEYEから流れ続ける悔いの涙は、その海面を更に上昇させてしまっているのかもしれない。
MOTAS.はこのBLEYEという生き物に、“どんな状況でも明日はあり、何かを背負いながら生きていく”、という想いを込めているという。
■BLEYEの背負う未来は
この先更なる温暖化により、1.5度、2度と気温が上昇していくと、地球環境にとってとり返しのつかない事態にまで発展してしまうという。海面上昇はその影響のたった一つの側面にしか過ぎず、生物多様性の減退、台風や大雨による自然災害の増加、干ばつ、熱波の襲来、森林火災といった様々な影響が、更に深刻化する。
こうした影響を防ぐため、これまで世界各国による国際交渉が進められ、2015年に「パリ協定」が採択された。産業革命からの平均気温の上昇を2度未満に保ちつつ、1.5度に抑える努力を追求することを、世界の目標として定めたものだ。
1.5度の上昇でも、様々な影響は避けられないのだが、更に、1.5度と2度のわずか0.5度の違いでさえ、以下のように影響の甚大さが大いに変わってくる(*3)。
■残された時間はあと4年?
1.5度の気温上昇に抑えるために、2030年には2010年比で温室効果ガスを半減させなければならない。もし、2010年の時点で対策を始めていれば、毎年3.3%の削減で済んでいたのだ。しかし、残念ながら、ニンゲンたちはそれを実行しなかった。
そうなると、2020年から10年間の場合、毎年7.6%の削減が必要になる。2025年から5年間の場合だと、毎年15.4%の削減が必要となる。しかしその削減率は、ほぼ不可能と言われている。つまり、私たちに残された時間はあと4年ほどしかないらしい(*4)。
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